基礎編

免責手続と免責不許可事由

このページで学ぶこと

端的にいうと:免責不許可事由があっても、実務での免責率は極めて高い(裁量免責が広く運用されている)。代理人の仕事は「不許可事由を隠す」ことではなく、「裁量免責の判断材料を揃える」ことです。

免責手続の流れ

  1. 破産手続開始の申立て=免責許可の申立てとみなされる(248条4項)
  2. 調査——同時廃止では書面審査+免責審尋(庁により)、管財事件では管財人による調査と意見(250条)
  3. 債権者の意見申述期間(251条)
  4. 免責許可決定(252条)→ 確定により効力発生
  5. 効果:破産債権について責任を免れる(253条1項本文)。非免責債権(同項各号)を除く

免責不許可事由(252条1項)

主要なものを実務上の頻度順に整理します。

事由実務での典型
4号浪費または賭博その他の射幸行為による著しい財産減少・過大な債務負担パチンコ・競馬・FX・暗号資産取引・ホスト/キャバクラ・高額課金
1号債権者を害する目的での財産の隠匿・損壊・不利益処分申立直前の名義変更・財産移転
2号換金行為等(著しく不利益な条件での債務負担・クレジット枠の現金化ショッピング枠現金化・新幹線回数券の転売
3号特定の債権者への偏頗的な担保供与・弁済(特別の利益を与える目的・義務なき行為)親族・友人にだけ完済してからの申立て
5号支払不能なのに詐術により信用取引で財産取得返済能力がないと知りつつ収入を偽って借入れ
6号帳簿の隠滅・偽造・変造個人事業者の帳簿不提出
7号虚偽の債権者名簿の提出親族債権者の意図的除外
8号裁判所への説明拒絶・虚偽の説明審尋・管財人面接での虚偽
9号管財人等の職務妨害
10号7年内の再度の免責(前回免責確定から7年以内)二度目の破産の受任時に必ず確認
11号破産法上の義務違反(説明義務・重要財産開示義務等)

🎯 実務で狙われる:受任時スクリーニングで最優先すべきは**4号(浪費・賭博)・2号(現金化)・10号(7年制限)**です。10号だけは裁量免責でも救済が困難な「期間の壁」なので、前回免責の確定日は初回相談で必ず確認します。

裁量免責(252条2項)

破産法252条2項 前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。

実務では、不許可事由(特に4号)があっても、次の事情を考慮して裁量免責が広く認められています。

⚠️ 実務の落とし穴:裁量免責を支えるのは「手続への誠実さ」です。不許可事由そのものより、それを隠したこと(8号・11号の上塗り)が免責を危うくします。「正直に書いて裁量免責」が唯一の戦略です。

免責の効力

📋 実務チェックリスト(免責対応)

確認問題

【○×】賭博により著しく財産を減少させたことは免責不許可事由にあたるため、ギャンブルが原因の破産では免責は認められない。

答え:× 4号の不許可事由にあたりますが、裁判所は一切の事情を考慮して裁量免責(252条2項)をすることができ、実務では誠実な申告・改善を前提に免責される例が大半です。

【○×】免責許可決定が確定すると、破産者の債務について保証人も責任を免れる。

答え:× 免責は保証人その他破産者と共に債務を負担する者の責任に影響を及ぼしません(253条2項)。債権者は保証人に全額請求できます。

【事例】依頼者は3年前から競馬で約400万円の債務を負った(債務総額600万円)。免責の見通しと、受任後に依頼者にさせるべきことを述べよ。

解答例 債務の過半が賭博によるもので252条1項4号に該当し、免責調査型の管財事件となる可能性が高い。もっとも裁量免責(2項)の運用に照らし、①競馬の期間・金額・頻度を特定して陳述書に正直に記載し、②現在は競馬をやめていることの裏付け(投票サイト退会、家計の家族管理への移行、家計収支表の継続作成)を作り、③管財人調査に誠実に協力すれば、免責の見通しは十分にある。受任後直ちにさせるべきことは、ギャンブルの完全な中止と、その客観的裏付けの形成(中止時期が早いほど心証がよい)である。

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