基礎編

破産手続開始決定の効果

このページで学ぶこと

端的にいうと:開始決定の瞬間から、破産者の財産は「破産者のものだが破産者は触れないもの」になります。触る権限はすべて管財人へ——これが手続全体を貫く基本原理です。

中核的効果 — 財団の成立と管理処分権の専属

要件(開始決定の要件)

  1. 破産手続開始の原因(支払不能〔15条〕、法人は債務超過も〔16条〕)
  2. 申立てが誠実であること(不当な目的による申立て等の棄却事由〔30条1項〕がないこと)
  3. 手続費用の予納(同項1号)

効果

  1. 破産財団の成立(34条1項)——開始時に破産者が有する一切の財産(差押禁止財産等を除く)が財団を構成する(固定主義——開始後の新得財産は含まれない)
  2. 管理処分権の専属(78条1項)——財団所属財産の管理処分権は破産管財人に専属する。破産者が開始後に財団財産についてした法律行為は、破産手続との関係で効力を主張できない(47条1項)
  3. 個別的権利行使の禁止(100条1項)——破産債権は手続によらなければ行使できない

🎯 試験で狙われる:開始決定後、破産者が財団所属の不動産を第三者に売却しても、その効力は破産手続との関係では主張できません(47条)。相手方の善意・悪意を問わない絶対的構成である点が、民法の意思表示規定との大きな違いです(同条2項により登記等を信頼した相手の保護規定はある——49条参照)。

他の手続への影響

手続開始決定の効果
破産債権に基づく強制執行・仮差押え・仮処分新たな申立て不可。係属中のものは破産財団に対して失効(42条1項・2項)
破産債権に関する訴訟中断(44条1項)。債権調査で異議が出れば債権確定訴訟として受継
財団財産に関する訴訟(所有権紛争等)中断し、管財人が受継(44条)
滞納処分開始にされたものは続行できる(43条2項)。開始後の新たな滞納処分は不可(同条1項)
担保権実行(別除権)破産手続によらず実行できる(65条——別除権。詳細は別トピック)

破産者の義務と制限

申立代理人の開始決定後の役割

開始決定により財産管理は管財人に移りますが、申立代理人の仕事は終わりません。

確認問題

【○×】破産手続開始決定後、破産者が破産財団に属する不動産を善意の第三者に売却した場合、その売買は破産手続との関係でも有効である。

答え:× 破産者が開始後にした財団所属財産に関する法律行為は、破産手続の関係では効力を主張できません(47条1項)。相手方の善意は救済要件ではありません(不動産については登記の信頼に関する49条等の調整規定があります)。

【○×】破産手続開始決定前に租税につき着手されていた滞納処分は、開始決定後も続行することができる。

答え:○ 43条2項。開始に新たな滞納処分をすることはできませんが(同条1項)、既着手のものは続行可能です。強制執行(42条・失効)との違いに注意。

【事例】管財事件の破産者(会社員)が「出張で1週間大阪に行く必要がある」と相談してきた。対応を述べよ。

解答例 破産者は裁判所の許可を得なければ居住地を離れることができない(37条1項)。もっとも実務の運用は柔軟であり、行先・期間・連絡先を記載した許可申請書を裁判所(事件係)に提出すれば、就労に伴う出張は通常許可される。無断で行くと説明義務・手続協力の評価に影響しうるため、「事前の書面申請で問題なく行ける」ことを説明し、申請を代行する。

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