基礎編

法人と代表者の同時申立て

このページで学ぶこと

端的にいうと:中小企業の借入れには、ほぼ例外なく代表者の連帯保証が付いています。法人が倒れた瞬間に保証債務が代表者個人に襲いかかるので、**法人破産の相談は最初から「2人分の事件」**として受けるのが正解です。

経営者保証の構造

したがって、法人のみ破産させて代表者を放置すると、代表者は保証債務の請求・差押えに晒され続けます。代表者個人にめぼしい資産がなく保証債務が多額なら同時破産が原則形であり、資産・収入があり再起を図る場合には経営者保証ガイドラインによる保証債務整理(破産によらない私的整理。一定の資産を残しつつ保証債務を免除し、信用情報にも登録されない)の検討が先行します。

同時申立ての実務

手続上の取り扱い

法人・個人間の資金関係の整理(申立準備の核心)

中小企業では法人と代表者の財布が混在しているのが常態です。申立書では次を必ず整理します。

関係処理
役員借入金(代表者→法人への貸付け)代表者の法人に対する破産債権。代表者個人の財産目録に債権として計上(回収可能性はほぼゼロでも記載)
役員貸付金(法人→代表者)法人の財団財産=管財人による代表者への回収対象。個人破産側では債務として計上。実体(実際は使途不明金の科目振替)の精査が必要
代表者個人名義の事業用資産(車両・不動産)実質的帰属を整理。法人資金で取得した個人名義資産は否認・財団帰属の論点
代表者報酬の未払い個人側の債権(労働債権性は争いあり)として整理

⚠️ 実務の落とし穴:決算書に計上された役員貸付金は、管財人が代表者に返還を求める債権になります。実態が「使途不明金の貸付金処理」である場合、その説明(実際は何に使ったか)が代表者個人の免責調査に直結します。受任時に決算書の貸付金勘定を必ず確認し、実態を聴取しておきます。

代表者個人の免責の特殊性

📋 実務チェックリスト(同時申立て)

確認問題

【○×】法人について破産手続開始決定があれば、その効果として代表者個人の保証債務についても破産手続が開始される。

答え:× 法人と代表者は別人格であり、代表者個人について手続を開始するには個人としての申立てが必要です。だからこそ同時申立てが実務の原則形になっています。

【○×】法人の決算書に役員貸付金が計上されている場合、法人の破産管財人は代表者に対してその返還を請求しうる。

答え:○ 役員貸付金は法人の財産(破産財団)を構成する債権であり、管財人の回収対象です。代表者個人の破産手続では破産債権として処理されますが、免責調査(流用の有無)の重要資料にもなります。

【事例】法人破産の相談で、代表者には自宅(個人名義・住宅ローン残あり・保証協会の根抵当権なし)と給与所得の見込み(再就職内定)がある。代表者個人の処理方針の選択肢を述べよ。

解答例 保証債務の額・自宅の残価値・収入見込みを前提に、①同時破産(自宅は任意売却またはオーバーローンなら処理の余地、免責で保証債務を含め清算)、②経営者保証ガイドラインによる保証債務整理(一定の残存資産〔華美でない自宅を含む余地〕を確保しつつ保証債務の免除を受ける。対象債権者が金融機関・保証協会中心であることが条件)、③個人再生(住宅資金特別条項で自宅を維持。ただし保証債務が多額だと最低弁済額が高くなる)を比較する。自宅維持と再起を重視するならまず②の適用可能性(誠実な資産開示・対象債権者の同意見込み)を検討し、不調なら①③に移る、という順序が標準的である。

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