基礎編

法人破産の受任と初動

このページで学ぶこと

端的にいうと:法人破産は「いつ事業を止め、誰にどの順番で知らせるか」の情報管理と段取りの仕事です。準備が漏れたまま破産が知れ渡ると、債権者が事務所・工場に押しかけ、資産と帳簿が散逸し、手続全体が壊れます。

初動の判断事項

1. 事業停止日(Xデー)の設計

受任後、申立てまでの準備期間と、事業をいつ止めるかを最初に設計します。考慮要素:

⚠️ 実務の落とし穴:事業停止が事実上の支払停止(15条2項)にあたり、以後の弁済は否認リスク(162条)を帯びます。「止めた後に、世話になった取引先にだけ払う」は典型的な偏頗弁済であり、代表者の希望があっても止めなければなりません。

2. 従業員対応

3. 資産・帳簿の保全

4. 取引先・債権者への対応

📋 実務チェックリスト(法人破産の初動)

確認問題

【○×】法人の事業停止後、長年世話になった仕入先にだけ買掛金を支払うことは、代表者の意向であれば差し支えない。

答え:× 事業停止は支払停止(15条2項)にあたり、以後の特定債権者への弁済は偏頗行為否認(162条1項1号イ)の対象となります。管財人による否認で仕入先が返還を求められ、かえって迷惑をかける結果になることを代表者に説明して止めます。

【○×】未払賃金立替払制度により、従業員は未払賃金の全額の立替払を受けることができる。

答え:× 立替払の対象は未払賃金の8割(年齢区分による上限額あり)です。また対象は退職日の6か月前以降の賃金と退職手当であり、賞与は対象外です。

【事例】運送会社(従業員8名)の代表者から「資金繰りが今月末で限界」と相談を受けた。今月20日が給料日である。初動の段取りを示せ。

解答例 ①直ちに資金繰りを精査し、20日の給料・解雇予告手当・予納金/弁護士費用の支払可能性を確認する。②給料支払後の資金残を予納金等に確保できるなら、給料支払直後を事業停止日(Xデー)に設定し、全従業員を解雇、同日に受任通知を一斉発送する。③解雇予告手当が払えない場合は30日前予告との比較・立替払制度(未払賃金・退職手当の8割)の説明で補う。④停止前に通帳・帳簿・車両キーを確保し、車両(リース・ローンの権利関係)をリスト化する。⑤従業員の離職票発行・社会保険手続の担当者を確保し、速やかな申立て(立替払の前提となる開始決定の早期取得)を目指す。

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