応用編(実務深掘り)

同時廃止と管財事件の振り分け

このページで扱うこと

振り分け基準の「当てはめ」が割れるボーダー事案での代理人の戦術と、やってはいけない調整を整理します。

端的にいうと:同廃に寄せる努力は「説明を尽くす」方向でのみ許されます。財産を基準未満に減らす方向の調整は、否認・免責不許可・廃止後の財団組入れという形で必ず割高につきます。

論点1 — 申立前の財産の費消はどこまで許されるか

適法な費消と問題のある費消

申立費用(弁護士費用・予納金)や生活費への充当は、相当額である限り問題ありません。境界が問題になるのは:

費消の内容評価
弁護士費用・予納金への充当適法。使途を領収書で明確化
通常の生活費適法。家計収支表と整合させる
滞納家賃・公共料金の解消偏頗弁済に形式上あたりうるが、少額かつ生活維持に必要な範囲は問題とされにくい運用
親族への返済内部者への偏頗弁済。否認対象(162条)かつ免責調査の典型事由
保険解約→使途不明説明できなければ隠匿を疑われ、免責調査型管財へ
振り分け基準を意識した直前の現金引き出し現金・預金の合計で実質判断され、意図的な調整は心証を著しく害する

実務指針

費消の時期・金額・使途を領収書・通帳で跡付けられる状態にしておくことがすべてです。20万円基準・33万円基準は「申立時の静的な残高」だけでなく、直近の資金移動を含めて実質的に見られています。

論点2 — オーバーローン不動産の同廃疎明

東京地裁運用では、被担保債権残高が処分予想価格の1.5倍以上であれば、不動産に財団形成の余地がないものとして同時廃止の余地が認められます(1.5倍を下回る場合は管財で精査)。

⚠️ 実務の落とし穴:住宅ローン滞納で競売が進行中の事案では、競売による換価が見込めるため、同廃の可否・申立てのタイミング(競売の配当終了後か)を含めて見立てが変わります。担保権実行の進行状況の確認は必須です。

論点3 — 予納金を準備できない依頼者

管財相当事案なのに引継予納金20万円が用意できない場合の選択肢:

  1. 積立てによる申立時期の調整——最も正攻法。受任から申立てまでの積立期間中の家計収支表がそのまま申立資料になる
  2. 法テラスの利用——代理援助は弁護士費用が対象で、管財予納金は原則対象外。予納金相当額の積立てはなお必要(地域の運用差あり)
  3. 過払金回収による充当——回収見込みがある場合は回収を先行
  4. 同廃へ寄せるための財産の意図的な費消——選択肢にならない(論点1参照)

積立てに時間を要する間に差押え等が迫っている場合は、予納金の分割納付の可否を裁判所と事前協議する余地もあります(庁の運用次第)。

論点4 — 地方庁との運用差

33万円/20万円基準は東京地裁の運用であり、たとえば:

申立先のローカルルール(書式・基準・予納金額)の事前確認は、地方事件を受任した際の最初の作業です。

確認問題

【○×】申立直前に預金を引き出して現金33万円未満・預金20万円未満に調整すれば、東京地裁運用では同時廃止が見込める。

答え:× 振り分けは申立時残高の形式判定ではなく、直近の資金移動を含めた実質判断です。意図的な調整は説明不能な資金移動として免責調査型管財に振られる十分な理由になり、心証も著しく害します。

【○×】法テラスの代理援助を利用すれば、管財事件の引継予納金も立替えの対象となるのが原則である。

答え:× 代理援助の対象は弁護士費用(着手金・実費)であり、管財予納金は原則対象外です。予納金は積立て等で別途確保する必要があります(地域による例外運用の有無は要確認)。

【事例】自宅(査定1,800万円)に住宅ローン残2,400万円。同時廃止での申立ては可能か(東京地裁運用前提)。

解答例 被担保債権残高2,400万円は処分予想価格1,800万円の約1.33倍であり、1.5倍に達しない。この場合、剰余の有無を管財人による精査に委ねるべき事案として管財に振られるのが原則的運用である。複数査定で価格がより低く出る可能性(1,600万円なら1.5倍)もあるため、査定を複数取得して疎明を尽くす余地はあるが、境界事案として管財化の可能性を前提に予納金準備と依頼者への説明を行うべきである。

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