基礎編

法人

このページで学ぶこと

制度の趣旨

団体が活動する際、構成員全員の名義で契約や登記をするのは煩雑であり、構成員の交代のたびに法律関係をやり直す必要が生じます。 そこで法は、一定の団体や財産の集合に権利能力(法人格)を付与し、団体自身の名で権利を取得し義務を負えるようにしました。これが法人制度です。

法人は法律の規定によらなければ成立しません(33条1項・法人法定主義)。法人格という強力な法的地位を、法の定める要件・公示と引き換えに与える趣旨です。

解説

法人の種類

分類軸類型
構成社団法人(人の集合)/財団法人(財産の集合)
目的営利法人(株式会社等・会社法)/非営利法人(一般社団・財団法人法等)

民法典には法人の通則的規定(33条〜37条)のみが置かれ、設立・組織等の実体的規律は一般法人法・会社法などの特別法に委ねられています。

法人の権利能力の範囲(34条)

民法34条 法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。

法人の権利能力は定款所定の目的の範囲内に限定されます。問題は「目的の範囲」をどう画するかです。

💡 かみくだくと:会社は「儲けるための組織」なので取引の安全を優先して広く認め、強制加入の団体は会員の思想の自由を害しかねないので厳しく見る、という利益状況の違いが結論を分けています。

権利能力なき社団

法人格を取得していない団体(同窓会、入会団体、設立中の会社など)でも、実体が社団といえるものには、法人に準じた扱いが認められます。

成立要件(最判昭和39年10月15日)

  1. 団体としての組織を備えること
  2. 多数決の原則が行われること
  3. 構成員の変更にかかわらず団体が存続すること
  4. 代表の方法・総会の運営・財産の管理等、団体としての主要な点が確定していること

財産の帰属 権利能力なき社団の財産は、構成員全員に総有的に帰属します(最判昭和32年11月14日)。 総有とは、各構成員が持分をもたず、分割請求もできない共同所有形態です。脱退しても持分の払戻しは請求できません。

不動産登記 社団名義の登記は認められず、代表者個人名義(または構成員全員の共有名義)で登記するほかありません(最判昭和47年6月2日)。「○○会代表者」という肩書付き登記も許されない点に注意が必要です。

具体例

例1 A大学の同窓会(規約・役員・総会あり)が、会費で備品を購入した。 → 権利能力なき社団の要件を満たせば、備品は構成員全員の総有に属する。退会した元会員が「自分の出した会費分を返せ」と請求することはできない。

例2 権利能力なき社団Bが不動産を取得した。 → B名義の登記はできないため、代表者C個人の名義で登記することになる。Cが交代した場合は、新代表者への移転登記手続が必要となる。

よくある勘違い

確認問題

【○×】法人は、法律の規定によらなければ成立しない。

答え:○ 33条1項(法人法定主義)。

【○×】判例は、株式会社による政治献金を会社の目的の範囲外の行為として無効とした。

答え:× 八幡製鉄政治献金事件(最大判昭和45年6月24日)は、政治献金も目的遂行に必要な行為に含まれうるとして目的の範囲内としました。目的の範囲外としたのは強制加入団体に関する南九州税理士会事件です。

【○×】権利能力なき社団の構成員は、脱退に際して持分の払戻しを請求できる。

答え:× 財産は総有的に帰属し、構成員には持分がないため、払戻請求はできません。

【短答式】権利能力なき社団が成立するための要件(判例)を4つ挙げよ。

解答例 ①団体としての組織を備えること、②多数決の原則が行われていること、③構成員の変更にかかわらず団体そのものが存続すること、④代表の方法・総会の運営・財産の管理等、団体としての主要な点が確定していること(最判昭和39年10月15日)。

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